サナガエンという並びがある。
これをトリプルバトルで使ってみようと思い立ったのが始まりだ。
5世代シングルバトルで研究が進んだラティハッサムの並びが4世代対戦環境に輸入されたという話があるように、後の世代での強力な並びを前の世代に持ち込んで活躍させることは可能なはずである。
概要
サナガエンとは。
7世代当時サナガエンを使ったことがないため、まずは当時の構築記事を読んでみることころからスタートする。
各ポケモンの大まかな採用理由は以下のようである。(あくまで記事だけ読んだ私の解釈である)
メイン火力、トリル要員
ハイパーボイスを撃った回数だけ勝利に近づく。トリルはあくまで相手のS操作に対応するための技であり、積極的に使用するものではない。
ユーティリティ枠であるとともにハイボが通らない相手への高打点として動く。8 ,9世代と比べ火力重視の配分を施されることが多い。
霊獣ランドロス
威嚇、サーナイトとの攻撃方面の補完(地面)、スイーパー
中速に寄りがちな構築の速さを補うためスカーフを持つことが多い。威嚇要員としてサイクル参加後、終盤にスイーパーとして運用される。
サンダー
高数値の追い風枠かつリザードンに薄くならないことから採用されている。電気打点での役割遂行を重視し火力重視の配分になることが多い。
対雨、対テテフグロス、対ドラン
6枠目採用となりがちな補完枠。水に強い水であり、7thでは半必須のフィールド枠。メガネで即時火力もしくは瞑想で詰め筋になれるようにし、いずれの場合も火力重視の配分であることが多い。
サーナイトとの防御方向の補完、対トリル、胞子によるごまかし、粉による詰め
これらからざっくりまとめると、
・ビートダウンに大きく寄せたスタンダード
・追い風を基本戦術とし、追い風ミラー及びトリルへの切り返しとしてトリルを有する
・メガサナのハイボの一貫性を作る、もしくはメガサナのハイボで一貫性を作ることを目的とする
構築であると考えられる。
暗礁
メガサーナイト→いる
ガオガエン→いない
霊獣ランドロス→いる
サンダー→いる
カプ・レヒレ→いない
モロバレル→いる
ガオガエン→いない
~完~
……ではない。
確かに構築の主役であるメガサーナイトがいなかったら再現は不可能であろう。しかし、ガオガエンはあくまでもサーナイトとの相性の良さから採用されている枠であり、それは代役となれるポケモンが存在しうるということである。
まずは同じ炎/悪タイプを有するポケモンを検索して…
~完~
ではない!
まずは種族値。
ガオガエン:95-115-90-80-90-60
~完~
まだだ!
仮に耐久面で大きく劣っているなどという形容では済まないくらいの差があったとしても、素早さでは大きく勝っている上に火力面では互角程度であり、攻撃方向の補完役という点から見れば必ずしも劣っているとは言えない。
続いて数値以外、特性や覚える技を比較していこう。
ここで問題!
・いかく
・蜻蛉返り
・はたきおとす
・フェイント
~完~
誕生
……違う!
ダブル/トリプルで猫威嚇の有無の差は致命的だとかもらい火で炎無効であることを加味してもガオガエンの方が場持ちが良いだとかそもそもサイクルに参加できるかどうかの観点から違うとかいう話はあるものの、特殊主体であるため威嚇されても問題ないところや悪の波動で端端攻撃ができることは強みになりうる。
こんな言葉がある。
"カードの単体の性能に「A」という不足があるとき、プレイヤーは「『A』がないから弱い」と考えがちだ。だが、デッキビルダーは違う。「このカードが『A』を持ったら最強だから、『A』を持たせるデッキを作ればいい。」"--『だらだらクソデッキ vol.9 -ジャイアンツ-』 まつがん
つまり、ヘルガーが猫と威嚇と耐久を持つことでサナガエンが再現できるなら、それらを構築全体で補ってやればよいのだ。
検証
かくして、サナガエンが作られた。
並びはこう。
威嚇の枚数は1枚少ないが、威嚇ガオガエン未解禁の頃から存在した並びであるため許容できるとの判断。
ヘルガーの配分はこれ。
火力と耐久を確保しつつヘルガーの強みたりうる素早さもギルガルドの上を取れるところまで。さらにHBに努力値を割くことで威嚇が入っていれば陽気メガガルーラの捨て身まで耐えることができる。オーバーヒートでH252盾ガルドが落ちないのは内緒だ。
水タイプでねこだましができるカメックスにチョッキを持たせることでねこだまし枠を確保しつつパーティ全体のサイクル性能を底上げ。対水性能は出せないがそこはサンダーサーナイトモロバレルでなんとかなるだろう。
またサンダーはCSベースにしてしまうとトリプルバトルでは生き残れなさそうであったためいつもの穏やかのやつにした。
さあ、行くぞサナガエン!
敗走
……ダメでした……勝てん。
悪炎の攻撃性能とフェイントによるハイボの補助は確かに強かった。のだが耐久の低さがあまりに致命的で、抜群は仕方ないにしても等倍技に後出しするだけで体力が半分以上削られる。
上述の耐久重視配分を持ってなおヘルガーはサイクルに参加させられなかった。
熱風を撃ってくる相手にもらい火が活きる場面やフェイントによる詰め性能、ハイボ+オバヒでガルドを倒せるなど確かに光るものはあるのだがそれ以上に脆さが足を引っ張る。
それ以外にも
・カメは頑張ってるけどなんか足りない
・スカーフランドの扱いわからなすぎ
・ニンフィアが重い
・ドーブルも重い
といった欠点が露呈。
邂逅
それはすなわち、さらにガオガエンを探求せねばならないということを意味する。
改めて、ガオガエンが持つ要素を考えてみよう
・いかく
・サイクル適正
・サーナイトとの攻撃方面の相性
これらを満たすポケモンは……いた。
二代目Gソウル(ガオガエンのソウルを継ぐ)ブラザーズ
ガオガエン:95-115-90-80-90-60
私は同じタイプだから代わりになるなどという甘言に惑わされた自分自身を恥じた。見るべきは表面ではなくは本質。彼こそが真なるガオガエンだったのだ。
改良
ズルズキンを採用した
の並びにより、立ち回りやすさは格段に向上。勝率もそこそこ上昇。ラムサンダー+カゴズキンの布陣でダクホに屈することもなくなった(当社比)。
しかし以下のような問題があった。
・ニンフィアが重い
・スカーフランドの扱いがわからなすぎる
・ニンフィアが重すぎる
のだ。
まずはサンダーに光の壁を搭載。これまでは元構築の技を参照しめざ氷にしていたが、撃つ場面がまったくなかったための変更である。
更にランドロスをスカーフからチョッキランドに変更。スカーフランドの使い方が死ぬほど下手であるためここでギブアップ。岩雪崩で雀の涙程度の削りを入れては死んでいく悲しい生き物これ以上見ていられなかった。
並びは満足行くものである。果たしてこの変更により構築は完成を見ることができるのか。
代償
サンダーへの光の壁採用、そしてチョッキランドロスへの変更は革新的だった。
威嚇サイクル+光の壁でダメージレースは圧倒的優位に。
光の壁下であればズルズキン以外はハイボに後投げすることができる。
ここに来て完成形が見えてきた。
かに見えた。
しかしこの並びには致命的な欠点があったのだ。
スイクンが強すぎたのだ。
威嚇2枚+光の壁のサポートを受けた瞑想スイクンの詰め性能には凄まじいものがあった。ありすぎた。
再考
スイクンが強すぎるため構築がサナガエンではなくなってしまう。
これは難しい課題であった。
試行錯誤の末たどり着いたスイクンに頼らず、サナガエンとして構築を作り上げなければならない。
パーティの並びに関してはコンセプトであるサナズキン、やはり最強の追い風役であるサンダー、序盤から終盤まで立ち回り上欠かせないモロバレルまでの4枠はこのままで良いと思えた。
従って残り2枠を探していくことになる。
三代目Gソウル(ガオガエンのソウルを継ぐ)ブラザーズ
ハイボに後投げできる威嚇枠で、バークアウトが使える。S95からの鬼火で相手の火力を削ぐことでサーナイトの物理耐久を実質底上げできる。
炎打点としてカウントできるため、サーナイトとの攻撃相性も完璧だ。
二人合わせてガオガエン!
そして6枠目にはかつて採用されていたチョッキカメックスが復帰。
個別解説
こうしてたどり着いた
の並びによりサナガエンは一旦の完成を見た。と思う。
以下は個別解説である。
175(252)-x-100(116)-176(116)-136(4)-103(20)(メガ前)
175(252)-x-100(116)-220(116)-156(4)-123(20)(メガ後)
7世代で使われていた配分から一番使い勝手が良さそうなものを選んでみたが、火力耐久素早さいずれも文句なしだった。
構築のコンセプトでありエースアタッカー、緊急時の切り返しトリル役。
一致技としてサイコショックを採用。ニンフィアやチョッキハリテヤマに対し大きな削りを入れることができる。モロバレルによく耐えられたのでそこを重視する場合はサイコキネシスの方が良いかもしれないが、ニンフィア相手の遂行速度を重視。
ズルズキン@カゴのみ
172(252)-144(164)-138(20)-x-138(20)-85(52)
ガオガエン枠。
正直あまり信用していなかったが、十二分に活躍してくれた。やはり威嚇と猫騙しの両立は偉い。
はたき落とすにより一貫性が出やすい点、けたぐりで火力を出したい相手に火力が出るところも偉かった。(筆頭はガルーラとドーブル)
フェアリー4倍はどこまでもつきまとう問題だが、壁+バークアウトでフェアリーを封殺しにいく構築になっていたためそこまで困ることはなかった。
捨て台詞を覚えたら完璧だったが贅沢は言うまい。
ウインディ@たべのこし
197(252)-130-100-108-101(4)-161(252)
フレアドライブ/バークアウト/おにび/まもる
HSぶっぱ。
第二のガオガエン枠。
フェアリー耐性がある威嚇持ちで、高めのSからバクア鬼火のデバフを撒くことでサーナイトの行動数を確保する。
半信半疑で採用したものの、期待を大きく超える活躍。
単タイプながらも種族値自体は高いためサイクルに参加することができる。カメバレルと合わせた水+草+炎のいわゆる御三家サイクルはなんだかんだ便利。
基本的に物理相手は威嚇2枚で立ち回り、鬼火は外れても問題ない場面で撃つようにしていた。
火力低下状態で撃ち合うかデバフ解除のための交換際にハイボを被弾するかの2択を迫るのはやはり強力だった。
サンダー@ラムのみ
197(252)-×-120(116)-147(12)-132(76)-126(52)
10まんボルト/ひかりのかべ/おいかぜ/はねやすめ
いつものパメラさんのやつ。 例によって非理想個体。
追い風スタンといえばこのポケモン。いつもどおり強かった。
今回は追い風よりも光の壁を押す回数の方が多かったように思う。
ガルーラのように圧倒的な火力を持つポケモンがいない構築のため盤面で腐った場合に不利を背負いやすく、2回目の追い風/光の壁のために羽休めするべきか即交換して撃ち合いに行くべきかの判断が難しかった。
167(252)-80-129(68)-145(212)-126(4)-114(124)
カプ・レヒレ枠。
隙あらば潮吹きできる点は強力で、サーナイトのハイボと合わせて一瞬で相手の盤面を崩壊させると気持ちが良い。
1でもHPが残れば猫騙し役として詰めに使える点、また激流が発動する点から突撃チョッキとの相性が抜群であった。
221(252)-x-134(252)-105-101(4)-31
まもる/ギガドレイン/キノコのほうし/いかりのこな
HB252、最遅。
モロバレル枠。
隣を交換しつつ盤面を整える動きが多かったため守るを採用。
総評
ヒードランが結構重いなどまだまだ考察の余地はあると思われるが、一旦はここまで。
本家サナガエンの完成度には到底及ばないものの、メガサナ入りとしてそれなりの完成度になったのではないだろうか。
なお遂行速度早くないポケモン好き好き人間の作った構築の常として純正滅びパには概ね勝てない。初手ではこっちの都合の良い動きをしてくれることを願ってボタンを押し、当然通らないので2ターン目に降参ボタンを押そう。
参考文献
サナガエンに関する先行研究(構築記事)
http://emolgame.blog.fc2.com/blog-entry-155.html?sp
https://app-date.net/gardevoir_switch/
https://note.com/gunngulu/n/ne7d94f97b5cc
https://raiboruto710.hatenablog.com/entry/2019/04/02/132745
だらだらクソデッキvol.9
https://article.hareruyamtg.com/article/article_1505/
ズルズキンとサンダーの配分
https://pamela-emuritto.hatenablog.com/entry/20141211/1418303108
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